2014年6月5日木曜日

232 第四章 福音宣教の社会的側面>III 共通善と社会平和>現実は理念よりも大切である



232.理念は、概念的につくられたものですが、把握や理解、現実の操作の機能のうちにあります。現実から切り離された理念は理想主義や非効率的な唯名論の源になっています。究極的には分類し、定義はするけれど、何かを呼び覚ますということはしません。何かを呼び覚ますものは、合理化によって照らされた現実です。形式的唯名論から調和に満ちた客観性へと移行しなければなりません。そうでなければ、真理に手を掛け、そうして体操を美容術で代用するようなものになります[185]。宗教的指導者をも含め、政治家のうちには、自分の提案はこれほど論理的ではっきりしているのに、なぜ民は自分を理解せず、ついてこないのかと自問する人がいます。おそらく、それは純粋に理念だけの国に自らを据え、政治や信仰を修辞に格下げしてしまったからかもしれません。単純さを忘れ、人々になじみのない合理性を外側から導入してしまったからという人もいるかもしれません。


[185] プラトン『ゴルギアス』, 465参照.

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